空間デザイン論 田上先生講義「集合住宅とコミュニティ」
Space Design Theory Lecture by Dr. Tanoue "Apartment buildings and community"
2009年6月15日
九州大学芸術工学部環境設計学科の「空間デザイン論」「空間プロジェクト」の一環として,田上健一先生に講義をお願いしました。実は空間デザイン論の担当者として事前にお名前はないのですが,進めていく中で田上先生の話があった方が絶対いい,ということになって,特にお願いしたものです。
講義の最初は,ご自身でも調査されている軍艦島(端島)の話からでした。RC集合住宅としては同潤会より10年以上前ということになります。屋上庭園(もちろんコルビュジェより前),ピロティもありますし,混構造あり片持ち梁ありというもの。高密度の仕掛けとして棟と棟のつなぎにブリッジ・階段・空中回廊ともりだくさんです。
ひとくちに集合住宅といってもアメリカ,イギリス,ドイツ等それぞれに思想の違いがあります。日本でも囲み型のものとして青山アパートや代官山アパートなど,コの字型,ロの字型で,凹凸のあるデザインがありました。
戦後の集合住宅はなんといってもnLDKでしょう。おなじみのnLDKというのは日本だけの表現だということを忘れないように,と話されました。
最近の集合住宅の紹介として,まず山本理顕設計の熊本県営保田窪第一団地。空間ユニットを作り出す概念として「閾」というセミパブリックな空間を使っています。4人の女性建築家が競演した岐阜県営住宅ハイタウン北方,妹島和世は隣接する住戸ひとつが使えるボイド空間を刺し,高橋晶子はバルコニーをすべてつなげず斜めに抜けたデザインをするなど,さまざまな試みが可能なことを示されました。さらに平面だけでなく立体空間の大きさや新しい家族のための住宅なども。
続いて共有空間をどうつくるかという点について,基本となる
C コモン(共有)
P パス(移動)
S サテライト(個々の部分)
について解説がありました。
ほかにもさまざまな例が紹介されましたが,茨城の松代団地のパブリックな人工地盤による上階の接地性確保などは参考になったのではないでしょうか。
最後に田上先生の考える「世界で一番いいピロティ」として,アルド・ロッシ設計のガララテーゼ(イタリア・ミラノ)が紹介されました。ピロティとその外部の関係,板状の列柱がルーバー状になって公園から太陽光が差し込む様子など,何か感じ取ってもらえたでしょうか。ヒントとしてピロティ空間の高さが肝心というお話がまとめとなりました。
撮影データ
[1] FinePix F100fd (16mm) PTLens Program AE, ISO1600, WB Auto
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