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空間デザイン論 石田壽一先生講義「空間と光(1)」

Space Design Theory Lecture by Prof. Toshikazu Ishida "Space and Light"
2009年4月30日

S090430112204_pt [1]

九州大学芸術工学部環境設計学科の「空間デザイン論」「空間プロジェクト」の一環として,非常勤講師をお願いしている石田壽一先生(東北大学)の講義がありました。(紹介が遅くなりました)

前半は建築設計とは何か,というところから。外在する外側の条件と,設計者に内在する自分の判断から,調停された創作者としての設計原理をいかに導くかというお話。大橋キャンパスからほど近く,すぐに見に行くことができるFLOP YumeRの設計プロセスを具体的に見せながらわかりやすく解説されました。

ここの敷地は四隅がかきとられた変形十字形で,そこに100m2の練習場を含む多目的スペース,こどもプラザ,九州大学サテライト,さらには駐車場などをおさめるという条件です。条件を満たすだけでも大変ですが,それだけでは設計とは言えません。ここではいろいろな利用者にとっての都市の廊下,縁側のような空間を構想したと言います。ゆるやかな境界で内外を分けた廊下的な空間(inside outside threshold device),駅から大橋キャンパスへの廊下ともなります。

外在条件としてさらに,限られた予算,短い設計期間も加わります。そこでプレファブのL字型壁面の組み合わせで曲線を構成することが考案されました(最初の写真)。これを組み合わせて廊下の形がスタディされ,最終的に半径の異なる円弧ふたつの平面をもった建築が生まれました。この設計では,さらに施工や廃棄物のことも考慮してアルミ材が多用されています。

S090430112226_pt [2]

福岡市のつくった初期案は,3つの用途の建物をばらばらに並べただけのもので,一方向のみのアプローチだったとか。この状態から「都市の廊下」というコンセプトに持って行くところまでが大変なので,さまざまなせめぎ合い,完成からは見えない裏のプロセスがあるということです。

次にコンペ案を例にした説明がありました。同心円の板を重ねたような床と天井を持つもので,段差のライズとピッチが変わることで,複雑な形状を実現しています。つまり複雑に見える形状を,ごく単純な原理で実現しているということです。このような「つくり方」はコンペの要項(外部条件)には書かれていないわけであり,設計者の内側から建築メッセージを考えることが必要なのです。

後半は,有名建築を題材に「空間と光」について語られました。
 ル・コルビュジェ ロンシャンの教会
 OMA Seattle Museum
 ヘルツォーク Signal Box Renovation,ガラスとシルクスクリーンのルーバー
 バラガン

そして石田先生のFLOP(Yume Rでも用いられたユニット)。上の写真でもわかるように,影を直接描くのではなく,ストラクチャーでどう陰影をつくるかということです。昼だけでなく夜の表情も重要です。問われているのは光の造形。

このあと,ル・コルビュジェ,ミース,ライトの違いについて配布プリントを使いながら説明が。

ライトについてはグッケンハイム美術館が示され,天蓋をフィルターとした和らげられた光,大きな光のかたまりとしての扱い。同じようにエルキンスバーグのシナゴーグもフィルターによって外光を操作して,内部に柔らかい光を取り入れています。トップライト部分は二重になっていて直接空は見えないわけで,初期のユニティチャーチの頃からの間接的なトップライト。

ミースについては,有名なガラスタワーのコンセプトスケッチ。そしてシーグラムビル,麗句ショアドライブ・アパートが示されました。反射光を重視したものとしてバルセロナ・パビリオン。石の反射,水の反射を用いて,実像と虚像の両方を見せています。素材の選択も,表面の鏡面仕上げもル・コルビュジェと好対照。このような硬質な空間に有機的な彫刻などが配されています。そしてブルノにあるトゥーゲンハット邸。初期の作品ですが赤い石に太陽光が反射するなど,反射が多用されています。ヨーロッパ人にとっては石とガラスは近いものであり,それらの色にはこだわりがあることが指摘されました。

このように,いろいろな例を見て,設計の手がかりにしてほしいというのが石田先生のメッセージで,建築家のスタイルが感じられるのは,内在的な原理があるからだ,ということを強調されていました。

撮影データ
(共通)FinePix F100fd PTLens, Program AE, WB Auto
[1] 8.1mm, ISO 800 [2] 11mm, ISO1600

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