公開講座「福岡の建築とライトアップ」 第3回 その2
Extention Course "Architecture and Illumination in Fukuoka" Day3 Part2
2008年11月12日
第3回の後半は私が担当で,ライトアップについて講義を行いました。以下は講義ノートより。もちろん講義では各所から引用した図や実例のスライドなども交えてくわしい説明を行います。これは参加者のみが得られるということですね。
1. ライトアップとは light up; exterior decorative lighting
建築的,美学的,造形的に価値のある構造物(歴史的建造物)や,商業用の建物,自然の景勝地(崖,峡谷,谷など),橋梁・ダム・塔などの構造物,美術品(彫像,彫刻など),樹木,花,噴水などの対象物を,光を用いて演出し,良好な夜間景観を形成することをいう。
広義には,レーザー光線や探照灯によるパフォーマンスや,夜間景観を十分に意識して計画される道路照明(橋梁照明)も含めて,ライトアップということもある。
(照明学会編「照明用語事典」,1990)
2. 建築デザインと光
・通常の建築外観デザインは昼間がメイン
たとえ内部が使用されなくても周囲が明るければ,見える
・夕方から夜間のデザインは歴史的には新しい
とくに外壁を照明するには高出力の電気照明が必要
・必ずデザインされるのは,昼間の光をベースにした
形とテクスチャー(表面粗さなど)による陰影および色彩
・ライトアップの観点から建築を分類すると
1) 設計時にライトアップはまったく考慮されていなかったもの:歴史的建造物など
2) 多少は考慮されているが,利用者による照明の割合が大きいもの:
集合住宅,オフィスビル,ホテル
3) 設計時よりライトアップを前提にしたもの:最近の商業ビル
3. 建築ライトアップのための光の基礎知識
・建築表面で光は透過または反射する
・透明ガラスでは透過するが,一部は表面で反射
・透過/反射する場合には,表面の粗さ・なめらかさ等により拡散度合いが異なる
・物体表面の色の見えは,光源の光スペクトルと,物体表面の反射特性(どの波長をどのくらい反射するか)により異なる
4. 建築ライトアップで考慮されるべきこと
・コンセプト どのように建築を見せるか
・機能 コンセプトに見合い,問題のない光で維持管理可能か
・モデリング 適度な陰影による3次元的な形状表現
・色彩 外装材の色彩とのかねあい
・グレア 通常見られる場所からまぶしくないこと
5. 福岡タワーのライトアップ
どのようなコンセプトでどのように照明されているか
冒頭の写真は,前日に香椎浜ショッピングセンターで撮影したもの。設計時よりライトアップを前提にしたもの,の例ですね。周囲は暗くなりますが建物の印象は昼夜であまり変わりません。AEONの文字の左側の装飾アップライトが切れてる・・・写真にはありませんが,壁面照明も切れて一部壁が暗くなっていたり,電球色蛍光灯が使い分けられているビルボードに白色蛍光灯が1本だけ入っていたりと商業施設にしてはメンテナンスが良くないようです。現在の標準はこんなもんなんでしょうか。
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