公開講座「福岡の建築とライトアップ」 第1回
Extention Course "Architecture and Illumination in Fukuoka" Day1
2008年10月15日
今年も芸術工学部で建築系の公開講座を企画しました。題して「福岡の建築とライトアップ」。せっかくの講座を,実際の建築空間を見ながらやりたいというのは前から考えていたことでした。時期的に,公開講座の時間は暗くなるので,ライトアップも組み合わせたら良いかな?というのが今年の企画。
担当講師は昨年までとほぼ同じですが,第1回は土居義岳先生による「福岡の大建築家」。背景として,建築家の誕生に重要な,教育インフラの話から始まり,バルセロナと福岡の相似性(福岡が100年遅い)へと,さすがに興味深い導入部。
福岡の大建築家と言っても,福岡出身で福岡で学び福岡だけで活躍したというような人はいないので,福岡(近辺)出身,福岡に事務所を置いたことがある,福岡に作品が多い,というようなイメージでリストアップされたのが以下の面々。なかなかすごいですね。
辰野金吾
菊竹清訓
磯崎新
黒川紀章
葉祥栄
有馬裕之
末廣香織
松岡恭子
ポイントとして挙げられたのが,国際的,最初はむしろ海外での評価が高い,普遍的,地域主義的でない,ということ。
後半は代表例として,磯崎新氏と葉祥栄氏の建築作品が紹介され,大建築家たる所以と,それぞれの個性について,多数の写真を示しながら解説されました。
最後に質疑もありましたが,デザインと構造に興味のある人がけっこういるのかな・・・来年の企画として考えてみましょう。材料の特性からデザインが決まることもありますし,木は圧縮に大変強いけれど曲げると変形するとか,鉄は引っ張りに強いとか,一般向けにはけっこう新鮮な話題がありそうです。
「大建築家」を評価するのはジャーナリズムだけか?というような質問もありましたね。建築というものの性格上,個人の時間スケールでは評価しがたいところがあり,ある程度の知識を持って将来にわたる評価も予測した,ジャーナリズムによる評価というのが成立するというべきでしょう。建築家と市民の違いはどうする,という指摘もありましたが,これも同じことですね。機能は一般市民でもわかる,その時点で必要な機能だけでない,将来にわたり価値を持つはずだ,という感性に自信が持てるかどうかが大きな違いではないでしょうか。確信に基づく説明ができる人に,ある程度まかせるというのが,これまでの人類の知恵だったかと。
受講者の質問する時間を奪ってはいけないので,何もコメントしませんでしたが,公共性のあり方などにもつながる話でした。現在の日本では公共というと,ひたすら平等,平均を目指していて,欲しいものができないどころか,結果として誰も欲しくないものができるということが増えているように思います。つまり「いらない」という人が少ないものはできるけれど,「欲しい」人がいるものとは違うということですね。個々の建築で全部を満足させることはできないのだから,全体の中に自分の欲しい公共物があればよい,というように考えた方が生産的では?自分は建築はいらないけれど,欲しい人がいるならそれも良いね,というように。
世界遺産などが話題になりますが,古い有名な遺産はみなさんお好きのようですね。昔のムダ?はうれしいが,今のムダ?は許せない??将来に遺せるようなものも「ムダ」とひとくくりにするのはやめたいものです。遺産をもらうことばかり考えて,後世に伝える,あるいは新たに作り出すことが軽視されているのが悲しいですね。私の担当する大学院のコース「環境・遺産デザインコース」のコンセプトは,ここの一石を投じようとするものだと思うのですが,なかなか伝えるのが難しい。
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