公開講座 「住まいの常識を問う」最終回
2005年12月7日(水)19:00~21:00
九州大学 大橋キャンパス5号館512教室
九州大学芸術工学部公開講座「住まいの常識を問う」最終回の講義の概要をお伝えします。最終回は私の担当でした。
以下,使用したスライドから引用します。
環境心理研究の例
アフォーダンス
パーソナルスペース
イメージ
環境デザインとそのプロセス
住宅デザインに関わる人々
専門家の誕生
建築家ってなぜいるの?
三大自由業
医師
弁護士
建築家
この三者の大きな違いはなんでしょう?
住まいの常識を問う 常識?その1
建築基準法を守れば良い建物ができる?
いいえ,建築基準法は最低基準なので,基準法どおりに作ると,良い建物はできません。
建築基準法は,建物を新築する時に規定ですから,建物の使用時についての基準はありません。
耐震性,耐久性は純粋に物理的な基準?
いいえ,どのくらい壊れてもよいか,どのくらい保って欲しいかという人の判断から決まる基準です。
最低基準を決めれば,良いものが増える?
常識?その2
日照権があるから住宅には必ず日当たりが確保される?
いいえ,用途地域というものがあって住居系以外では規定はありません。
将来,どうなるかは隣地の規制から予測するしかありません。
建物や近所を気にしなくてすむマンション?
いいえ,区分所有者同士は,経済的にも管理上も一体で逃れることはできません。
常識?その3
高断熱・高気密住宅は結露しやすい?
いいえ。ただし,高気密住宅は,なりゆきではなく,計画的に換気を行う住宅ですから,住み手が換気をしなければもちろん結露します。
高断熱・高気密住宅より伝統的住宅が快適?
いいえ,でも住まい方は全く変わります。
ではなぜ高断熱・高気密住宅?
家全体を冷暖房した方が健康に良いのと,エネルギー効率を両立させようとしているからです。
常識?その4
換気のためには窓を開けるのがベスト?
いいえ。換気感は最高ですが。
風呂に窓がないと湿気が多い?
いいえ,きちんと換気されれば問題ありません。外壁に面していなければ,むしろ乾きやすいことも。
住宅全体をうまく換気するのは?
給気口から換気扇まで,空間をまんべんなく空気が流れていくようにします。
住み手のニーズを理解する
どうやって?
当事者=利用者に直接尋ねる
多数の人が利用する場合は,設計者自身がユーザーに直接要求を聞くことは困難
代わりに調査という手段によって要求を明らかにし,それに基づいてコンセプト策定を支援
アンケート? いえ,インタビューも
要求がわからないから質問紙は作れないはず
質問紙では収録しそこなったことに関する情報は絶対に入手できない
心理調査のいろいろ
心理調査
最終的な意志決定,価値判断,行動はかなり意識的なもの・・・「言葉」の世界
自己分析的な手法 評価グリッド法,AHP法
無意識の評価をさぐる SD法(因子分析による潜在因子の抽出)
興味のある方は調べてみましょう。
もっと簡単なものは?
参考文献
「よりよい環境創造のための 環境心理調査手法入門」
日本建築学会編 B5判
技報堂出版 ISBN4-7655-2444-2
「人間環境学 よりよい環境デザインへ」
日本建築学会編 B5判
朝倉書店 ISBN4-254-26011-3
最後に修了証を一人ずつ手渡し,短時間ではありますが質問にもお答えすることができました。手元に届いたアンケートの結果からは,建築・住居関係の公開講座はけっこうご希望があるようで,今回の講座の続編も期待していただいているようです。ぜひ来年も計画していきたいと思います。
受講していただいた方々,どうもありがとうございました。今回は来られなかった,という方も次回は是非どうぞ。お待ちしています。
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