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公開講座 「住まいの常識を問う」第4回

2005年11月30日(水)19:00~21:00
九州大学 大橋キャンパス5号館512教室

遅くなりましたが,九州大学芸術工学部公開講座「住まいの常識を問う」第4回の石田先生の講義の様子をお伝えしましょう。「水環境と共棲するエコロジー住居の常識 オランダ・アンフィビアスリビングの住居デザイン」

s-051130-190334
FinePix F700 SuperEBC Fujinon 7.7mm(35mm equiv.)
ISO400 FL4200K

水環境と共棲する都市として,ヴェネツィアがあります。ラグーンにまちが成立して,水路,ゴンドラで水と密接な都市です。オランダはそれよりややあと16世紀にスペインと独立戦争をやって,17世紀にはヨーロッパ初の共和制国家となります。ライン川沿い,アムステルダムは人口100万弱ですが,物流拠点として世界的にもユニークな都市です。低地オランダと呼ばれる地域は,平均で海抜マイナス3~5mであり,人工的に海水をくみ出して成立しているところです。

中国の揚子江下流,蘇州も水環境の豊かなところです。上海蟹で有名な太湖があります。ここでも水路は重要です。もともと産業革命以前の物流はほとんどが水路だったわけです。住居の洗練の過程とも関連しています。このあたりには水を使う企業を誘致していますが,水環境の計画は大問題です。

アンフィビアス・リビング(大井注:amphibious=水陸両生,水陸両用の)
日本で住宅といえば,しっかりした土地の上に恒久的なものを建てるのが常識。でもオランダにはもともと地面がない。まず地面をつくる(土木工事)。つくっては流され,という洪水との日々の格闘があったわけです。近年では,地球温暖化による水位上昇が予想され,堤防でこれを防ぐ(堤防を高くする)のは経済的に無理とわかりました。また,水が汚れるという問題もあり,国家レベルでの議論が。

オランダは日本と関係の深い国です。デルフトも堤防で水を防ぎながら成立した都市。堤防は,監視人が常に見ているということを1000年近く続けてきたわけです。堤防監視は優先順位No.1。干拓は,まず水路を掘って堤防を築き,風車の動力で水を揚げて土地を作りました。地理的には,バルト海の交易とフランスやドイツを結ぶ場所にあり,アムステルダムが繁栄してきました。現在の観光船だけ見るとわかりませんが,水の制御という意味では外的条件の厳しい場所です。

教会堂は宗教的な観点から見られがちですが,物理的な建築の観点から見るとまた違った見方ができます。オランダは土地が弱いので,軽量化が必要でした。そのため,イタリアなどと異なり簡素なつくりになったと考えられます。装飾に対しては否定的となり,形式にも影響しました。革命とも関係があるかもしれません。

初期の集落はマウンド集落といって,15mくらいの丘をちくり,洪水の時にはそこに逃げる(登る)というものでした。盛り土,堤防の技術が発達すると,堤防にそって教会と町役場ができ,堤防にはりつくような形で住宅ができました。17cになると大洋交易で裕福になった商人が投資して大規模干拓が行われるようになります。

ヨーロッパの歴史でいうと,オランダへのキリスト教の伝搬は遅いほうです。ローマはヨーロッパを征服しながら修道院を建て,未開人を改宗させていきましたが,皇帝ネロもライン川からアムステルダムまで行ったけれど,このあたりは使えないからどうでもよいということで,さっさと通り抜けてイギリス制服に向かってしまいます。

建築の構成としてはデヒンホフの中庭型修道場が典型です。運が沿いにありますが,橋がひとつあって,これを渡って教会に入り,他の住居には中庭を経由して入るようになっています。各住居はコンパクトなユニットになっています。外部からの入口は一カ所だけです。この形式は高密度に住環境からの必然とも言えます。オランダの建物は前面(外側)は交易のための二層吹き抜け倉庫になっていました。後に倉庫が集約され不要になると,ここは気持ちの良い部屋になりました。コンパクトながら居心地の良い住まい,採光,通風など居心地に対する配慮もオランダの伝統です。オランダには木材や石材などの建築材料がないので,すべて輸入です。このため,寸法は一定でプレハブに近い形となりました。唯一できるのがファサードの輪郭,デザインです。前面ファサードは大きな窓があって間口もほとんど共通ですが,ディテールはみな違う。奥行き方向には100mに達するものもありますが,それでも間口は同じ。限られた中での自由を享受するという個人主義につながるものがあります。高密でも視線への配慮もあり,土木技術の制限が制限でなく,工夫を生む独特の空間美学となっています。

Amphibious Living Design
国際プロポーザルより 石田研究室のFloating Flopは2等賞

堤防を高くするだけでは財政破綻がわかったため,堤防内に余剰水をためるプールを作ることになります。しかし,堤防内に再度水を入れるというのはオランダでも未経験。
New environment Design Policy for 21st Century
- Comfort in the water
- Portable Hardware
 Exchangeability
 Eco-Sustainability

住むテリトリーが1/4くらい,水質浄化してくれる植生を1/4くらい配置してエコ・ガーデンとします。その他の小動物などがいるエリアが50%。今あるバランスをこわさずに人間が住むことを考えます。ロッテルダムがやってみたいと手をあげましたが,工場地帯であり,有機的な対応だけで可能がどうかがわからないため,提案にとどまっています。

水をためるプールに商品化住宅を計画しました。コンクリートの箱(船)を浮かべて,その中は自由に作れるというものです。プールの中には島をつくり,ここには集合住宅があります。これらは人気があり,すぐに完売しました。コンクリートの船は基礎がないので,バランスをてらないと傾きます。ピアノを置いたら傾いたので反対側に水タンクをのせたという話もあります。傾くと困るというのは常識ですが,環境側にメリットがあるなら,それを受け入れてその中で自由を享受しようという発想です。歴史的な体験から水は制御可能な平面とみなされていて,人間が譲歩した新しいライフスタイルにも人気があります。それでも水環境を征服してコントロールできるとは考えないので,コントロールしきれないところでどのくらい権利を主張できるか,トータルバランスを考えながら,便宜的に住んでいく,ということです。日本も埋め立て地は多く,これらは古い権利関係のない土地といえますが,環境とのマスタープランはおろそかにされがちです。風土や文化を大切にした,個人の権利ではない考えには学べるのではないでしょうか。オランダの都市はコンパクトです。拡張して制御できないことを避け,その代わり流通を最大限に考慮します。

現在の市場価値だけではない,環境配慮型のコンセンサスに向かうことができるでしょうか。日本の常識では成立しない,オランダの様子が実在しています。

さて,いよいよ次回は最終回,私が担当する回です。なんと企画者の田上先生は不在?うまくまとまりますかどうか。

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