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公開講座 「住まいの常識を問う」第3回(前半)

2005年11月16日(水)19:00~21:00
九州大学 大橋キャンパス5号館512教室

九州大学芸術工学部公開講座「住まいの常識を問う」第3回が行われました。
今回は外部から講師をお招きし,設計実務の立場からのお話をいただきました。

谷口 遵氏(建築デザイン工房一級建築士事務所)
大氏 正嗣氏(デザイン・構造研究所)

まずは前半の谷口遵氏の講義の様子をお伝えしましょう。
s-051116-190618
FinePix F700 SuperEBC Fujinon 7.7mm(35mm equiv.)
ISO400 FL4200K

I.「住まいに関する常識」って?
公開講座も3回目ということで,1回目と2回目で問題提起とある種の回答がされたのではないかと思い,今回は,住まいに関する非常識について検証してみたいと思います。私はクライアントや工務店から「あんた,非常識やね」とよく言われますし。三谷幸喜さんの書いた「ぼくらの家」のDVDを見ました。この中でインテリア・デザイナーと施主であるおとうさんがいろいろと衝突するわけですが,そのひとつに玄関のドアを外開きにするか,内開きにするかというのがあります。日本では玄関ドアはほとんどが外開きです。これは常識でしょうか?お客さんを迎えることを考えれば,内開きの方が便利では?もちろん日本では靴が脱がれていますから,開けるときにこれがじゃまになってしまいます。また,水の問題を考えれば,玄関の段差は外が低くなっていなくてはいけませんから,やはり外開きということになります。このように,「常識」と言われるものには何らかの経験法則というか,事情があるわけです。

II.理由のある常識,ない常識,作られた常識
・理由のある常識 ex:玄界島の住宅
 玄界島では玄関は南を向いているのが常識です。道路が敷地の北側にあっても玄関は南,つまり隣の軒先を通って玄関まで行くことになります。これはなぜかといえば,玄界島は冬の季節風が非常に強いところで,南側でなければ玄関を開けることも難しくなるからです。これなどは,「理由のある常識」と言えます。

・理由のない常識 ex:日射しと明るさ
 思いこみやことばのイメージによるもの。北向きの和室でも明るい部屋はあります。多くのエンドユーザーは南向きに大きな掃き出し窓があるのが明るいと思っていますが,これは間違った常識で,目は強い光がくれば順応するので,明るくは見えません。どこも同じ明るさというのが一番見やすい(大井注:一番良いというのとはまた違いますが)。設計例:中庭に空からの光を採り入れたもの,床に照明器具を仕込んだ部屋(面の明るさ,均一さを狙ったもの)

・作られた常識
ex:バレンタインデー? チョコレート屋さんが広めたもの
 住宅も供給会社による常識が。企画もの住宅やデザイナーズマンションでは他との差別化,争点を明確にすることをやります。衆議院選挙と同じですね。(そんな常識とは無関係なものとして)主に社寺建築の設計を仕事にしている人の住宅をやりました。彼は自分は特化したものを設計するので,住宅は多様化であるから逆方向の仕事だと言います。できあがった住宅を見ると,外観はガルバリウムの箱で木製ルーバー付き。デザインモチーフ的にはちょっとどうか?という感じ。中はごった煮的です。まず玄関は土間。和室の天井さおぶちは床の間に向かって突き刺さっています。マナー違反ですが,彼はこれが好き。洋室に置いてある家具はスペイン製,一番好きな町はバルセロナとか。子供部屋は今時の標準。つまりさまざまな判断基準は住宅の中では多様でもいいのではないか,ということを現実にしたものになっています。

ex:高気密,高断熱の家 最近よく希望が出るものです。外断熱を希望する人もいます。ここで結露について考えてみると,ある温度から温度が下がっていけば結露が起こるわけですから,「結露しない家」というのはなくて,「結露しにくい家」があるだけです。困るのは,「結露するのが見えない家」つまり人に見えるところではなくて,壁の中で結露させれば,見かけは結露しない家になる。私が企画もの住宅を設計する時には「結露します」と言ってしまいます。「その代わり,まずいところでは結露しませんから,拭いてください」と。外断熱の方がよいかどうかについては,使い方によります。外断熱は断熱材で囲むヴォリュームが大きいので温度変化は小さくなる。内断熱はそれと比べれば温度変化は大きい代わりに暖房すればすぐ暖めることができる。だから,ずっと家にいるような場合は外断熱がいいし,昼間はいないような場合は内断熱が向いている。つまり選択肢のひとつということです。(大井注:高断熱・高気密については最終回にもう少し解説しようと思います)

III.時とともに変わる常識
・なくなった常識
ex:物忌み,方違え 平安時代だと,東南の角に玄関がないと友達が来ない,ということになるので困りますが,現在はそんなことはもちろんありません。

ex:洋風ですか,和風ですか? 10年くらい前までは,住宅について最初に訊くことでした。決まったイメージがあったからですが,最近はなくなってきました。

・新しい常識
ex:メールは常時チェックせよ。 住宅と直接は関係ありませんが,最近「メールチェックが遅い」といって施主からクレーム(電話)が来ました。「30分前に出したのにまだ反応がない」というのです。そんなにメールを見たくはないので,それなら他の人を紹介しますと言ったら,思った通り断っていただきました。

ex:柱はまっすぐでなくて良い。 以前は必ず柱・梁にすじかいを入れていましたが,全部三角形で構成することもできます。これによって設計の自由度を高めることができます。設計例:両端はコンクリートの壁です。これは防火のため,2回ももらい火をしたそうで。前の家が増築を重ねて相当暗かったらしく,とにかく明るい家ということで,南側には壁がありません。北側も2階には壁がありません。

IV.ところによって変わる常識
ex:暑すぎる雪国の家と寒すぎる香港の家 もてなしの意味で過度に暖房・冷房されることが多いのです。

ex:風水,気学 こちらはプランを見られると恥ずかしい家「風水ハウス」。風水完全版の住宅です。これをやるとすべての部屋が廊下のようになります。もともと風水は中庭を囲んで複数の棟が建つような家に対するものなので,1棟の住宅に適用するとおかしくなる。本当にいいんですか?と訊いたのですが,「そうしないと息子の成績が上がらない」そうで,こうなりました。一方,この家はプライバシーには気を遣っています。水平ルーバーで前面道路からは中が見えません。玄関部分には外側にもうひとつ大扉があって玄関ドアもふつうは見えません。気学についても光が横から来る,とか北北東がいけない(季節風や敵が来る)というのは中国の北の方でできたものなので,ところ変われば,ねじる必要があります。

V.人によって変わる常識
ex:部屋から一歩出るとそこは道路 これは外科医として開業している人の住宅。最初は話が通じなかったのですが,部屋から一歩出るとそこは道路と同じというのです。これは自宅(同じ建物)の中に常に他人(患者)がいるわけですから,自分のテリトリーは個室だけ,ということなのです。そこでリビング・ダイニングが8畳くらいなのに,個室はそれぞれ13畳くらいあります。

ex:僅か5mの通勤 こちらは文系の大学の先生の自宅。大学には週2日だけ行き,あとの5日は自宅にいる。2棟に分けて,間に屋根をかけて欲しいという希望だったのですが,これはつまりこの2棟の間が通勤なのです。浴室・寝室のある棟からリビング・ダイニングの棟に朝移動したら夕方までは寝室側には行かない,というわけ。

その他の非常識?な例
 住宅ではないのですが,50回くらい非常識と言われた建物。なぜ(長方形の)壁が斜めについたような外観なのか?これは内部で隠す必要のあるところが上下にずれていたからです。胃腸科の病院棟。胃腸科では夜間,出口に鍵をかけるのが常識だそうです。だいたい飲み過ぎが原因で入院している人が多いので,絞めておかないと夜,抜け出して飲みに行ってしまうというのです。鍵をかけたくなかったので,代わりに出口に至る外からも見える階段を強烈に明るく照明することにしました。恥ずかしくて出られない効果を狙ったものです。これはうまく行きましたが,電気代がかかるといって怒られました。洗面所にはトップライトをつけています。これは入院中,外の天気も分からなかった経験から,少しでも様子がわかるようにしたもの。ここの先生は患者を待たせる人なので,待合室は少しでも快適にしようと天井裏に照明を入れて,いい雰囲気にしました。そうしたら患者が熟睡してしまい,呼んでも来ない,という問題が出て怒られた・・・見に言ったら呼び出しが絶叫していました。高齢者施設では,各個室の扉の色(原色に)を変えてみました。お年寄りは番号をなかなか覚えてくれないから「右奥の緑の部屋」といった感じで言ってくれるのではないかと期待したのです。これは成功でした。狭小土地に建てた住宅,これは浄水通りですが,売れずに安くなったので買ってみたら,ハウスメーカーからは断られてしまったというもの。

ex:間取り図が出来ると工事が始まる。 もしそうだとすると,これは家のつくりがすでに決まっているということ。毎回,生活スタイルに合わせようとすれば,断面も変わるはずです。建築家の役目は,つっこんで話をして,時にはけんかもして,これなら住めるのか,と問いつめるところにある。何が常識かという決めることはできないのです。そこには事情というものがある。住まいについては,自分たちの判断になるわけですが,建築家にできることは,行き過ぎたことをしそうな時にけっ飛ばして戻すことくらいでしょうか。

VI.おまけ
ex:設計事務所に頼むと,設計料の分だけ高い(レジュメにあったが話はなし)

これで,前半が終了,休憩となりました。後半は大氏さんの講義です。

次回の公開講座は11/30(水),講師は石田先生。オランダ住宅建築の最新トピックが聞けるはず。

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